ⓔコラム14-3-4 IgA優位沈着性感染関連腎炎 (IgA–

dominant IRGN)

 細菌感染による糸球体腎炎を広くまとめて感染関連腎炎 (infection–related glomerulonephritis: IRGN) とよぶ1).先進国ではIRGNの原因菌として溶連菌が減り,高齢者などでブドウ球菌やグラム陰性桿菌 (特に大腸菌) が増加している.APSGNでは自然治癒が期待できるのに対して,ブドウ球菌感染では重症化・慢性化することが少なくない.特に,免疫能の低下した高齢者などでは,MRSAを含めたブドウ球菌感染により補体の低下を伴い組織学的にIgAの沈着を伴うIgA–dominant IRGNを発症することがある2).糖尿病,悪性疾患,高齢 (65歳以上) が発症の危険因子であり,持続感染症例や敗血症を呈した症例でネフローゼレベルの大量の蛋白尿を伴い,しばしば重症化して急性腎障害に至る3).組織の光学顕微鏡所見としては,びまん牲または巣状のメサンギウムおよび管内増殖性腎炎像を呈し,種々の程度の壊死牲病変や半月体形成を伴う.蛍光抗体所見ではIgA,C3のメサンギウム領域および係蹄壁への強い沈着を認める.臨床的にはIgA腎症/IgA血管炎との鑑別が問題となるが,組織学的にも厳密に鑑別するのは困難で,感染の有無が重要である.糸球体に壊死性変化,半月体,管内増殖性変化など活動性の高い病変を認め,尿細管壊死,間質の強い炎症細胞浸潤があり,急性腎障害や急速進行性糸球体腎炎の臨床像を呈している場合にはブドウ球菌感染関連腎炎を考慮する.ブドウ球菌感染関連腎炎の治療では抗菌薬投与が主体となるが,83症例の調査では腎機能の改善が得られたのは45%に過ぎず,20%で腎機能障害が慢性化し,20%が慢性腎不全に至り,15%が死亡したと報告されている3)

〔有馬秀二〕

■文献

  1. Odaka J, Kanai T, et al: A case of post–pneumococcal acute glomerulonephritis with glomerular depositions of nephritis–associated plasmin receptor. CEN case rep, 2015; 4: 112–116.

  2. 尾田高志:感染関連糸球体腎炎に関する最近の知見.東京医科大学雑誌,2015; 73: 355–363.